閉じる

研究室と教員

微生物代謝学研究室(生化学 II )

微生物代謝学研究室(生化学 II )

 生化学Ⅱ研究室は細菌の栄養物質代謝と感染時の生体防御反応を探求する研究室です。

 栄養物質代謝の分野では、現在はピロリ菌のような病原細菌のビタミンB1(チアミン)の代謝関連酵素の反応機構や輸送系の分子機構に関する研究を行っています。細菌もヒトと同様に生きていくためにはチアミンが必要です。ヒトと細菌のチアミン代謝をつかさどるタンパク質には、構造や反応の仕方に共通する部分と異なる部分があります。最近、私たちは、胃に感染して胃炎や胃がんを引き起こすピロリ菌がチアミンを外から取り込まないと生育できないことを観察し、チアミンを菌体内に取り込む輸送タンパク質を発見しました。この輸送タンパク質はヒトのチアミン輸送タンパク質と構造が全く異なります。つまり、ピロリ菌のチアミン輸送タンパク質は抗ピロリ菌薬のターゲットになる可能性があります。このように、私たちの研究成果はチアミンと疾患との関わりについての研究に結びつくだけでなく、新規の抗菌剤開発に応用されることが期待されます。

 また、私たちは、病原体感染や種々の疾患で誘導される生体の炎症応答について研究を行っています。感染症から身を守るには、感染した病原体に応じて炎症応答を誘導することが重要です。一方、過度な炎症は炎症性腸疾患やリウマチなどの炎症性疾患の発症につながります。そのため、生体の炎症応答の全容を解明し、適切に制御することができれば、種々の疾患をコントロールすることが可能になります。しかし、現在、そのメカニズムの全てが解明されたとは言えません。私たちは、細菌感染で誘導される新しい炎症応答(Fasシグナル経路を介した炎症応答)を発見しました。また、この炎症によって、従来は知られていない新しいヘルパーT細胞が誘導され、細菌感染防御で重要な役割を担っている可能性が示されています。さらに近年、生体で過剰に誘導された新規ヘルパーT細胞が、炎症性疾患の発症に関与していることが明らかになりつつあります。私たちが発見した新しい炎症応答をさらに詳しく研究し、感染症に有効なワクチンや、炎症性疾患の制御方法の開発などに役立てることで、人々の健康に寄与したいと考えています。